トップ館長コラム談話室(11)

館長の談話室

談話室(11)

コロナが世界を駆け巡ってから、およそ2年半となりました。

まさか、こんなにも長い期間、当たり前の生活が脅かされるとはまったく想像もしていませんでした。
それでも、劇場文化を止めるわけにはいかないとの思いで、数々の感染対策を講じたうえで、コミネスではつぎつぎに事業を開催し、おかげさまで、たくさんの笑顔と出会い、そして感動の声をいただくことができました。

もちろん、ご来場いただいた皆様のご理解、ご協力、そして「皆で公演・演奏会を無事に楽しみたい!」という想いがあってこその、この2年半であることは間違いありません。
皆様に支えていただいたこと、あらためて深く感謝申し上げます。

この夏コミネスでは、夏休み企画「コミネス子どものための夏休み」として、人形劇団プーク「エルマーのぼうけん」、特別ワークショップ「君が王様!ミュージカルをやってみよう!」そして「リアル恐竜ショー 恐竜パーク」を開催しました。

「人形劇団プーク」さんは、1929年に創立された歴史ある人形劇団です。舞台公演のみならず、様々な映像作品や、テレビで放送されている教育番組、そしてまた海外公演や国際交流など、まさに日本を代表する人形劇団です。
今回の公演「エルマーのぼうけん」は、1948年にアメリカで出版され日本でも多くのファンに愛され続けている児童文学を原作に、“人形劇”として脚色された舞台です。プークの初演はなんと1965年! 以来、幾たびも上演を重ね、今回は2018年2月から続いてきたツアーの大千穐楽(最後の公演)を、コミネスで飾ってくださいました。

まさに親子どころか祖父母の代から3世代を越えて観劇され愛されてきた舞台には、子供たちの感情を揺さぶる、魔法のような魅力が隅々にまであふれていました。長い年月と時間と試行錯誤と手間をかけて熟成してきた、暖かく豊かな世界がそこにはありました。思わず椅子から立ち上がってエルマーに声援を送るお子さんたちの姿は、私にとっても忘れることのできない宝物になりました。
子どもたちにこそ、丁寧に作られた良質な舞台芸術に触れてもらいたい、という私たちコミネス職員の想いを叶えてくださる公演の機会を頂けたことに、大きな幸せを感じています。

子供たちの心は柔軟です。そして、いつも上へ、先へ伸びようとしている若芽のようです。
彼らの想像力のパワーは、経験値の未熟さを超えて、時にはどんな大人にも負けない理解力と洞察力を発揮してくれます。
真に創造的なものを彼らの嗅覚は嗅ぎ取り、「子供騙し」にはそっぽを向きます。
子供たちに向き合うことほど、クリエーターたちにとって怖いことはないとも言えるでしょう。

夏休みの企画は、私たちにとっても、改めて心の襟を正す良い機会になりました。
また来年も素晴らしい企画で、子供たちのキラキラした目に会いたいと思っています。