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館長の談話室

談話室(8)

先日(6月23〜26日)、白河市教育委員会のご協力のもと、コミネスのアウトリーチ事業「音楽のアウトリーチプレゼント~NHK交響楽団メンバーによる弦楽トリオ演奏会~」を、市内の小学校6校・中学校4校で実施しました。

その素晴らしい音色・演奏との出会いは、まさに大人の私たちコミネス職員にとっても宝物のような時間であり、豊かな演奏と魅力あふれるお話しを、直接、生徒の皆さんにお届けできたことを本当にうれしく思います。

小・中学生のころに出会う芸術は、実はとてつもなく重要です。
心と感性が柔軟なこの時期に出会う芸術が、その後の人生における「基準」として深く刷り込まれるからです。余計な先入観なしに、ただ全身で吸収し、「?」や「!!」が心と脳みそに湧き起こります。その自然な感受性こそが、その後の文化芸術との付き合い方の原点になると言っても過言ではありません。だからこそ、小・中学生の時期にこそ、真に質の高い芸術と出会ってほしいと願うのです。

芸術との出会いは、「見知らぬ街」を旅することに似ていると思います。
まったく言葉の通じない、どこかの国、何があるかもわからない町を歩くとき、人は五感すべてを使って何かをつかみ取ろうとします。何もかもが新鮮に、そして強烈に、耳や目や全身に飛び込んできます。それこそが「出会う」ということです。

けれど、もしかすると、未知のものに対する警戒心や物怖じする気持ちが先に立って、おちついて歩くことができないかもしれません。そんなとき、ほんの少しでも、「この建物はこんな歴史がある」とか、「ここにはこんな人がいた」などの手がかりがあるとどうでしょう。もしかすると、一気にその街への親しみが増して、今度はゆっくりと自分の感性で探索できるかもしれません。
初めての出会いには、ほんの少しのきっかけや手引きがあると、実はとても有意義な時間が送れるのではないかと思うのです。

もちろん、価値観の押しつけや、感性や感想を無理強いするようなことはあってはなりません。
ありのままのそのものだけを案内し、そして出会いのチャンスを用意してあげれば、あとは受け取った人次第です。アウトリーチは、そんな出会いになれればと思うのです。

良い出会いを重ねていくうちに、自分の好みも自覚するようになり好き嫌いもでてきます。それでいいのです。そうやって、自分だけのお気に入りや、質の良し悪しの判断ができるようになると、ますます芸術は身近で楽しいものになっていきます。そんな経験を重ねていって大人になったときに、芸術は決して肩ひじ張ったものでなく、いつも自分と共に、生活の中に当たり前に存在するものになると思うのです。

小・中学生へのアウトリーチには、実はそんな長い長い時間をかけた願いが込められているのです。

また、素敵な機会を準備して、小・中学生の「?」や「!!」に会いにいきたいと思います。